詩の水族館/ハァモニィベル
 
白い小さな水藻の花
 夫『水清(き)よければ魚棲まず、駄目だよ』
 妻『そのかはり、月影が澄む』
一日一日と歩くなら、お互ひに氣もちよくだ。
だから伴侶といふ言葉には味がある。
でも煮ても燒いても食べられるものぢやない〈時雨〉





片足をふみ外した陥穽(おとしあな)から、わたしはそつくり月の裏側をみた。
ニツケル製の湖水が光つてみえる
湖上を、鳶いろの大鯰が二間のしぶきをあげて、遊弋(ゆうよく)する。
湖をかたむけた波が、水銀色に零ぼれて氷りはじめると、
湖畔の生活は暮れて、湖をあとに燕のやうにわたしは転生したのである。
ききき 聴けよ

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