バタイユについて/杉原詠二(黒髪)
バタイユは、自分の思想の根幹を、刑苦、すなわち、狂気の体験に見ている。しかし、わたしは、三十年間、あらゆる狂気、苦しみ、闇、混乱を、
生き続けてきたので、釈尊のおっしゃるように、苦行には意味がないと知っている。戦争にチャンスを見出す、というような思想は馬鹿げている。
なぜなら、破壊されたものは戻らないという自明の理を、しっかりと見ようとしないからだ。時代の病理の中に意味を見出そうとするなら、
まずは、苦の経験から立ち直ったものの超回復という論理が一番正しいと言えるだろう。そこの一点にのみ希望を見出せる。
また、経験された苦は、苦の理解となり、苦を滅する方法について、覚る機会を与えるとも言え
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