陰翳/積 緋露雪00
 

いづれも生き生きとしてゐて
闇に溶けた陰翳は、
石原吉郎の「海を流れる川」といふ言葉が指す存在の意地を抱きながら、
夜の闇の中を陰翳として存在するのだ。

その陰翳のある範囲が俺の居場所。
しかし、闇と陰翳の境界は消し飛び、
俺を意識することでのみ俺の存在は担保される。

「意識=存在」を説いた先人に埴谷雄高がゐたが、
夜の宵闇に消え入る森羅万象の陰翳は、
意識=存在を体現してゐるのでないのか。

闇の中ではいづれもが己が己である事を意識せずば、
存在が闇に溶けきってしまふのだ。
陰翳とは、かくも深く存在に結び付いてゐて、
陰翳と存在の親和性は抜群に高く、

[次のページ]
戻る   Point(2)