深い陥穽に墜ちたとは/積 緋露雪00
解り切ってゐた。
とはいへ、俺は何を思ったのか、煙草を銜へて紫煙を呑み込み、
その紫煙の中に消えゆく俺の視界に溺れて、
さうして誤魔化す現実の先には醜悪極まりない現実ばかりが横たはり
その現実に絞め殺される思ひをしながら、
絶命する事ばかりが宿命と呼びかけて魂の動揺を抑へるのだ。
何を以てして俺は俺と言へるのかと、
永く俺を悩ませてゐた懊悩を
この際その縺れた俺が俺と言ふものを解きほぐしながら、
尚も俺は存在すると胸奥で叫ぶのだ。
その声が何かに届くのかと言はれれば全く不明なのであるが、
この際、世界を、さう、此の世界を呪はずして何を呪ふのか。
世界が流転す
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