海と狭軌/森 真察人
 
ボリビア行きの電車に
重たい体を預け
ひとりで飲むジンジャー・エールの味を
確かめに行く
鞄から一冊の本を取り出して
次の停車場まで読む
  それは僕があなたのように
  ひとの心を受け容れる
  満月の上るような時間

鉄の庇(ひさし)に身を隠し
雲の間にあらわれては消える
金星のようなひとに
僕を会わせるために
女のあばらの一本から
あなたはこの地をお創りになった
  ひとつの水を
  天と海とに分(わか)たれるとき
  その熱い哀しみを
  あなたは一身に受け容れた

あなたは少女のかたちをしている
そうしてその細い両の腕を伸ばし

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