暑い夏の記憶から─南京大虐殺物語について─/室町 礼
隊皆で囲んで
どちらが生き残るか対決させたというのです。
つまり中国捕虜を闘犬や闘牛のように扱ったという。
「人間というのはいざとなると凄い。最後はへとへとになりながら
軍用犬を倒してしまった」
こともなげにそのおやじはいう。そこには一ミリの罪悪感もなく
まるで花見や海水浴の体験をはなすようにあっけらかんとしていて
わたしは少しばかり身体が硬くなった。
捕虜にしてみれば生き死にをかけた必死の戦いだっただろうに。
やさしい日本人にもいるよな、こういうタイプが。他人の痛みなど
屁とも思わない人間がときにいる。いや、ときどきいる。
一般に世界中でそう思われているやさしい日本人とそう
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