running water/ホロウ・シカエルボク
かに精を出そう、スクワットや腹筋なんかでもいい、今日はとにかく身体を動かして、訳のわからない音など気にならないくらいに深く眠ればいい、もの足りないならしばらく外を走ってくればいい、というわけで、走ることから始めた、外に出なければならないものから始めたというわけだ、数十分ほど走っているうちに違和感を覚えるようになった、始めはその原因が何なのかわからなかった、悩みながら走り続けてしばらく経ってようやく気付いた、足音にあの音が混じっている、耳を凝らさなければ気付けないほどのボリュームで―思ったよりもまずいことになっている気がする、でもだからといって途中でやめるわけにもいかない、俺は予定のコースを走り終えて家に帰った、汗まみれになった服を脱いでシャワーを浴び、身体を拭いて新しい服を身に纏った、水を一杯飲もうと蛇口を捻った時、水音は連続するあの音になっていた、俺はコップを手に持ったまま、しばらくの間茫然と流れ落ちる水を見つめ続けていた。
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