ハミガキな話/林 理仁
 
仕事場の
可愛いねえちゃんが
必ず
昼飯食べたあと
ハミガキをしていた

その
美しい
品のある横顔は
なんとも忘れがたくて
なんだか鮮明に覚えてる

僕は男だけど
ある日、仕事場の兄ちゃんが
あの時の僕のようなまなこで
僕が歯を磨いてるのを見ていた

人って
知らず知らず影響を受けてるんだな
と思ったよ
あのねえちゃんみたいに美しいかは分からないが
あのねえちゃんになれたみたいな気がして
嬉しかったね


先輩、最近、仕事大分慣れてきました
おー!良かったなー!出世間近だな!
仕事辞めようと思ってるんです

夜風がいつもより優しく感じる
その優しさに慣れてしまうのが怖くて
胸のうちはサラサラと世に抗い
さらに大きな優しさを求める






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