死を運ぶ蟻のように/室町 礼
 
め息がいっせいに漏
れ出たというのです。
「いや、凄かった」すぼめた肩を下ろす仕草でその
ときの緊張を語る詩人の興奮した顔。
わたしは思わず眼をそむけました。
見てはいけないものを見たような、聴いてはいけな
いものを聴いたような気がしました。
要するに彼らの動機がなんであれかれらはホロコー
ストの実録風映画からスリラーやサスペンス映画と
かわらない心的振幅を感受している。本人はそのこ
とに気づいていないし、まったく考えたこともない
だろうけど「ホロコースト」にそのようなゾッとす
るような日常的感覚との落差を見たがっていたこと
は明らかでした。
(なんだかなあ。)と思いま
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