尾長冬鳥/岡部淳太郎
長く 長く尾を引いて
冬の光が伸びてきて
そのわずかな明るさに僕らは癒されて
あなたに会いたい
乾いた静電気のような刺激を
暖かさとともに与えてくれるあなたに
長く 長く尾を引いて
冬の寒気は忍び寄ってきて
その尾に僕らは巻きつかれては凍えて
だから こんな時には
あなたに会いたい
冬の乾きを確認させ
湿った涙の痕を思い出させてくれるあなたに
それから長く 長く尾を引いて
冬は僕らを包んで
その透明な暴力にひたすら耐える時がつづいて
あなたに会いたい
あなたに触れたい
あなたを感じて
あなたとともに在りたい
僕らそれぞれが結局は乾いた
湿ることも混じり合うこともないとおさであることを
思い出させてくれるあなたに
あなたの優しさ
あなたの厳しさ
あなたの無関心
あなたの煩わしさ
それらすべてを越えて
長く 長く尾を引いて
冬の鳥は飛ぶ
僕らの絶望のような
冬の寒空を切り裂いて
だからこそ いまはただ
あなたに会いたいのだが
(2020年12月)
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