雨宿り/岡部淳太郎
あの日 僕等は
雨宿りをしていたね
突然降って来た雨から逃れて
適当な軒下に落ち着いて
肩を並べて 雨宿りをしていたね
周りでは 同じように雨宿りをしている人たちが溜息をついて
濡れた髪や衣服を気にしては
雨の落ちゆく中空にうらめしそうに眼をやっていたけれど
僕等はそんな他人にかまうことなく
二人肩を並べて まるで運命のように
そこに無言で立っていたね
まだ互いの体温を確かめ合うほど
僕等はませてはいなかったけれど
子供なりにどこかどきどきして
無言のなかに多くの歌を秘めて
雨を見ながら 立っていたけれど
この雨が次の季節を用意していることなど露知らず
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)