アジノタタキ/
たもつ
繊維の構造に
光が降り注いで
戸惑ったわたしは
少しだけ早口になった
アジノタタキ、と
呪文を唱えた
日除けの帽子は
柔らかな海になって
凪いだまま
わたしの身体に
収まっていった
夏草の匂いをかぐと
名探偵のように人の後を
尾行したくなるけれど
誰もいるはずがないから
一人いつまでも
待ちぼうけている
観察記録をつけながら
爪先立ちの深呼吸
生きることに触れた
それもまた
夏の宿題だったと
八月の終わりに
ようやく気づいた
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