彼女もまた傷付くのだとしたら/由比良 倖
ひとりでいることの虚しさと、ふたりでいることの寂しさ。
おんなじ言葉を喋っていても、
人はそれぞれ、住んでいる惑星が違う。
おんなじ惑星の彼女に出会った僕は、
ただこの星にこもって、言葉の畑を耕していたい。
地球に住む誰とも、もう言葉を交わしたくはないんだ。
僕は生ぬるい砂の風になって消えていくだろう。
人たちは「また黄砂か」とでも言うだろう。
またひとつ既製品のお墓が増えるだろう。
僕は骨になって、彼女とそこに入るだろう。
けれどまた、人と話したくて、泣きたいくらいの僕がいて。
言葉をたがやし、耕して、地球の人を招くだろう。
「きれいね」と言って、踏み荒らされるとしても。
僕は招き続けるだろう。
本当の僕がひとりぼっちで、とてもみにくくて、
本当は彼女しか愛してないとしても。
僕は僕の言葉に、人を招き続けるだろう。
ひとりでいることの荒れ果てた畑と、
ふたりぼっちで耕す豊穣な畑。
どちらが本当は悲しいのだろう?
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