ソフトボール/凍湖
 


電話口で「まつげが逆さまで目が痛くてつらい」という内容のことに
「手術までがまんですね」というようなことを返したと思う

その数日後、倒れてるかれが見つかった

その報せが来た日
かれをよく知ってる人がじっと口を引き結んで透明な涙を流していた

かれのさいごの会話で
もう少しマシな返しはなかったのか
わたしはそれが?しごと?だったのに

あの日、乾いたマウンドの上で
かれの純粋なやさしさでくれた球に報いる
そんな返球ができていたら
かれのこの世のさいごをもっとマシにできていたら


いつだってどれがさいごの球になるかわからないまま
マウンドをおりることもできない
そのこわさは夏の草の色をしている
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