きのくにの湯/花野誉
 

薄鼠色の空

雨を見ながら温泉に入った

背後は鬱蒼とした山々

纏い付く滑らかな湯

一人きりの湯場にはしゃぐ

足音に振り向くと

こんな平日

こんな辺鄙な所に誰が来よう

石の囲いの中

森の香と湯の香にかき混ぜられ

湯の中 絡まったり縺れたり

誰もいないところでは

俄然 積極的な人

もう少し 

早く気づけていたらよかった





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