わたしの場合毒虫ではなく/ただのみきや
 
いるような感覚感慨にふけり暫しぼんや
りしていたのだ

ことばの方はいっこうに垂れも零れもしなかった 漫画
の吹き出しばかり 絵もなければ文字もない 完全なのっ
ぺらぼうの時間 こんなものどれだけ増えても重ねても
欠伸ひとつにもつり合わない 己の脈拍まで聞こえて来
そうな沈黙でギュウギュウ詰めになった密室の時計なし
の秒の進軍 そんな状況に飽き飽きしたわたしはペンを
白紙から引きあげた 白紙には黒い点 ペン痕だけが残っ
ている  はずだった

ところが点とペンの間になにか細く黒い糸のようなもの
がインクの粘性ここに極まれりとでも言うべきかどんな
にペンを高く上げても腕を
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