私達に何が足りないのか?/花形新次
世界に対して
言うべき何かを持たない
私達は
否応なく
自分の興味に深く
沈み込む以外にない
しかしその狭く閉ざされた空間には
同じように
そこへ流れて来た難民が
少なからず、いや思っていた以上に
同じ難民を待ち望んでいる
私達は世界に対して
何かを言う必要はない
私達の閉ざされた空間の中でのみ
通用するコミュニケーション手段で
お互いを理解すれば良いのだ
そして何らかの外圧(恐らく閉ざされた空間を
興味本位で覗き見た者がある種の優れた
空間に漂う浮遊物を見つけた場合の行動)
によりやがて閉ざされた空間が決壊したとき
世界に対して言うべきことが
溢れ出るのだろう
それは全て無意識のうちに行われるのだ
そして、それは良いことだ
私達に足りないものなどない
と私は思う
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