横浜からの手紙/花野誉
 
「あなたが入っていたらいいのに。」

その一文に鷲掴みにされた

先日送った小包

そのお礼の手紙

初めての あなたからの手紙

美しい字で書かれた宛名を見て

あぁ、そうだったなと思い出す

教室の後ろに貼り出された書写

私も幼い時分から書道をしていたけれど

あなたの字とは雲泥の差

小癪な奴といつも思っていた

散々なドライブからの

一度きりの口吻のあと

あなたは横浜に行ってしまった


近況と部屋の間取りなど

丁寧なです・ます体の文章

恋文とは程遠いもの

それがとても新鮮で

真新しい二人になった気がして

そんな関係でもよいかと思えた

でも二枚目の手紙で

心の箍が外れた

「あなたが入っていたらいいのに。

小包に入っていないか探しました。

独身の間に一度、横浜に来なさい。」








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