蟻/栗栖真理亜
軒下で蟻たちが黒い列を作り蠢いている
そこへ一匹の蟻が逆走して他の蟻を押し退けながら強引に進もうとしていた
蟻同士はぶつかり合いながらなんとか狭い隙間を縫って歩んでゆく
(去年までの私もこの蟻たちのように立ち働いていたのだ)
非正規労働者が多く働く職場で非正規である私たちは常に
仕事と責任と時間に追われ、企業からは
「お前たちの労働力なんざ
いつでもITに取って変わることができるんだからな」と
暗に脅しをかけられ
肉体的にも精神的にも余裕がなくなり
限界を迎えた私たちは同じ労働者である筈の仲間を攻撃することで
なんとか精神の均衡を保とうとしていた
他課から転属して
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