初雪/山人
な風になびく
ただ二言三言のありあわせの言葉を交わしあう
やがて散りゆく様を美しいと形容するのは
最後にきらめこうとする光と色である
年月の隙間に湧き出したオアシスのような思いが
ひとつずつ膨らんで、感情を刺激する
刻んできた時間を、他愛もない好日に
老夫婦は車を繰り出して秋深まる此処に来たのだ
それは、微かに自らの終焉の黒い縁取りを飾る行為のようでもあり
膨大な重い歴史に身を縮まらせるでもなく
ふわふわと綿あめのようにそれを背中に背負い、浮遊しているかのようであった
国道のカーブの突端に記念碑がある
その眼下には放射冷却の湖面から浮き出した霧が覆い
蒼い湖面と峰岸のモザ
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