幻想の珠/栗栖真理亜
 

僕の鋭くとがった針金のようなココロを
鈍くなだらかに変えてゆく
愛しいヒトの忘れ形見よ

あのヒトの事は片時も忘れないと
固く信じていたのに
大切なヒトの顔すら
もう、どんな姿カタチだったのか
思い出せない
そう、まるで水溜まりを掻き混ぜたみたいに

様々な色彩が入り乱れ
濁った黒へと変色して
僕の拠り所は
珠とともに失ってしまったんだ

あぁ、頭を抱えて
うずくまる僕を許して・・・

愛しい君からの贈り物
遥か遠くの記憶から呼び起こられる
君と僕のふたりだけの宝物

僕は君の事だけは
一時も忘れたくなかったのに・・・。
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