アンパン/凍湖(とおこ)
毎日アンパンを食べている
このアンパンはすべての栄養がバランスよく入ってると宣伝されていて
飢えないためだけに食べる
完璧な栄養のアンパン
それを手にしたブラウン管のなかの刑事、張り込みをしている
皺のよった眉間と険のある目つき
その先にわたし
ひとり暮らしの
いつ破綻するともしれないやる気をぎりぎり引き絞って
なんとかかんとかやってるひとり
決められた時間に起きてるか
食べてるか
仕事に行ってるか
風呂に入ってるか
寝る前に服薬してるか
ちゃんと寝てるか
だれにも聞かれないから
アンパンの袋を開けながら
ブラウン管の刑事の目をおもってる
その目は見ている
わたしがきちんと生活の奴隷をやってるか
そして待ってる
わたしが暴発して反抗しはじめる日を
わたしを見つめる私的な暴力装置
空袋の向こうに
その目
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