再現/リつ
実際、視覚は
それほど大したことじゃないんだ。
現実に見えていることが、
必ずしも真実ではないように。
思い出す。
忠実に。
キミの肌触りは
柔らかく滑って肉厚の花弁、
(ああ、一本三百円の薔薇だ。)
月並みで陳腐な深紅のバラ。
それでも極上の。
キミの匂いは甘く
不自然な
二百円のヴァニラアイスクリーム。
化学薬品で合成した方が、
強く香るんだ。
舐めれば腋下は苦く、
石鹸を齧った後味の悪さを
汗ばんだ口溶けで
消してゆく。
上気した肌から
ヴァニラと
深い杜の
湿った苔の匂いが
混じる。
溢れてる。
濡れた生臭
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