【帰還】/リつ
夕闇と夜を愛して
太陽を
忘れてしまったの。
明るく眩しい世界では
光の霊が踊ってて
私の不器用な手足は軽やかではなく
無様に翔んで転んでは無邪気に笑った。
風の精は疾く優しく通り過ぎるから
走りながら先切れるほどに手を振った。
お日様が永遠だった頃の遠すぎる創世の記憶
思い出したのは
澄んだ月が囁いたから
産まれる前から知っていた其の寂寥を。
闇の眷族ならば誰もが覚えている静かの海の砂のおと。
あなたの瞳に宿る影
あなたの鼓動の儚さと
あなたの聲に隠れた黒曜の狂おしさ
あなたと私は同じ輩
暗黒の聖母を慕い
ひかりに恋がれながら
安らげぬ同胞
夜が明ける
かえろう
あの渇いた砂の鳴く
懐かしい海へ
そして真昼に眠り
忘れてしまった太陽と蒼い地球の夢を
目覚めるまで
果てしなく
夜に抱かれて。
(2006年 記)
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