酔っぱらいの説く/メランコリック
 
前後不覚の不自由に陥るのもまた自由と言い訳し、自由のためだと酒を呑む
ポーズをとるために飲むのだが、「喉で渦巻く概念を飲み下すためだよ」と誰にでもなく言い訳し、大仰な仕草でちょびちょび呷る
孤独の身故独り煽っているのだが、「孤高でなくては駄目なのだ」と涙もついでに呑み干そう
元来味など分からぬが、「安くて不味いのが乙なんだ 気まずくないのが肝要なのだ」などと馬鹿を晒して酒を呑む
呂律は回ってないのだが舌は出鱈目好き放題 面前で口は開けぬが虚空に対しては雄弁さ
既に理性は喪失し視界は回っているのだが、「私の視界は回っていない 酔っぱらいが世界を回して世界も酩酊気味なのだ」とやけくその論
酔うほどに呑めず味も分からず自棄にも誠実にもなれぬ虚しい冷笑 吐き出せぬもの
それでも呑みたい時もあるのだ 視界が揺れているからこそ美しく見えるものもある
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