日の丸/詩乃
 
白地に紅円
それはとても素朴で
 それはとても美的で
  それはとても荘厳で
腐った今日には
とても勿体ない

ここぞと掲げられる日の丸は
情けない背中を見つめては泣いている

どこかに掲げられた日の丸は
いつか掲げられた日の丸は
家出づ人を力づけ
汗とも血ともともにあり
南洋で朽ちつつはためいて
世界を眺めて微笑んだ

いつしか日は沈んだ

切り裂かれた
燃やされた
死体が紐でするすると
昇らされては
そよ風に揺れる

形だけの崇拝に
欠伸混じりの唄声に
鼻くそほじった回れ右

日は沈んだまんま

もういいさ
太陽は墜ちたんだ
穴の開いた日の丸
黒が染める白地
誰かが卑しい笑みで顔を出した

日はもう昇らない

ぱっぱと顔の前で白旗でもあげてろ
後頭部を撃ち抜く衝撃
飛び出る脳味噌・血液
1億2000万の血の丸
萬歳萬歳萬歳
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