アダムとイブ/栗栖真理亜
 
私を見つめる貴方の目があまりにもまっすぐで
私の心さえ射抜いてしまうほど素直だったから
私は貴方の嫌いな運命という言葉すら信じようとしたわ

“やはり、貴方が私の運命の人だったのね、そうでしょ?”
必死で心の中で叫びながら問いかけるけど
強く見つめ返す瞳にすら貴方は応えようとしないのね
代わりに親しく“やあ、元気?”なんて片手を揚げて笑いかけるけど
私は貴方が思っているようなことを期待していた訳じゃないのよ

物欲しげな他の女の子達と同じようにしか私を見ていないだろうけど
すべての女の子が尻軽だなんて思わないでね
手から滑り落ちたペットボトルさえ気付かずに
釘付けになった私を貴方はそっと笑うけれどどんなに笑われたっていい
そんな貴方を軽くにらみつけるだけよ

さあ、ゲームは終わり
気になりだした貴方の視線がちらちらと私の方へ舞うけれど
にっこり笑い返せばジ・エンド
貴方は無視を装い私から視線をそらせて他の女の子へと愛嬌を振りまく

自意識過剰なふたつのこころは
そのまま宙へ舞い
そのまま分かれて
自分たちの持ち分へと還っていくわ
戻る   Point(0)