毒薬と娼婦/栗栖真理亜
 
深い眠りが更に深い眠りへと私を誘い
絶望の波が私の体ごと岸辺へと押し流していく
私の魂は紅い血を流し
辛い塩水によって洗い流されていく
だんだんと意識は遠のき
やがて真っ白な空間が私を支配するだろう

懐かしい望郷の念も
母に抱かれた温かな思い出もすべて暗い海底へと沈めながら
生けとし生けるものすべての哀しみを背負い
私は闇へと己を貶めていく

追い詰められたケモノは牙を向くこともなく
涙を堪えながら傷をさらに深くえぐり出す
誰かの声を聞くでもなく
かといって自らの避難の声に耳を傾けるわけでもなく

愛だの恋だの人生だの茶番はもうとっくに終わったのだ
私には何ひ
[次のページ]
戻る   Point(2)