水晶/
栗栖真理亜
少女は涙を流した
涙は薄紫色の水晶でキラキラ光りながら
紅潮した頬の上を伝い落ちていった
少女は強く握った拳でゴシゴシと目を擦った
擦られた瞼はたちまち赤く腫れて分厚く垂れ下がった
やがてこの子の痛みは和らぐことでしょう
泣き腫らして赤く燻んだ瞳で鏡に映る自分の姿を強く睨みつけながら
少女は小さく息を吐いた
わたしはわたしのことを知らない
他人もわたしのことを知らない
彼女の瞳にはもう輝く水晶の痕はなかった
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