遷移するバラの花束/朧月夜
 
薔薇の花束を届けようとしたU子さんが、
通りの曲がり角のところでふとかけ足になる。
こそばゆく、茎と葉と棘と包装紙は揺れて。
今日は雪が降った初めての日、
それからずいぶんと経って、また雪が降った日。
でも、やはり初めての日……今年になってから。
わたしが生まれてからも、初めての日。
そう思おうとした、最初の日。
……何を? ということを聞かないで。
もう、忘れて分からなくなってしまったのだから。
……
そして、薔薇の花束を受け取ったK美さんが、
「主人の帰宅は来年……」とか、そんなことを思う。
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