言葉だけになって/朧月夜
あなたはただ、わたしではなく親御さんを選んだだけ……
と、あなたがとうに大事ではなくなってしまった今に思う。
あまりにも若すぎたから真剣だったんじゃない? たぶん。
もうあなたの面影すら覚えていないと、ふと振り返った瞬間には、
瀬戸内の海にきらめく日差しの光だけが見えた。
わたしが覚えていたのは、ただそれだけだった。
だから、あなたの名前と地名とが混ざり合い、凝固する。
……さて、いつかの日の記憶としてあなたの面影を思い出せる今日は、
たぶん(また?)あなたを忘れつつある、最初の日なのだと思う。
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