春はこない/栗栖真理亜
春はこない
いまのわたしは冷たい風と雪とが吹き荒ぶ冬
いつか読んだ物語のように
魔女がわたしのこころを冬にしてしまった
春はこない
夏も秋も
たとえ季節が移り変わったとしても
わたしのこころの氷は溶けやしない
暖かい日差しがわたしに降り注がないかぎり
春はこない
わたしは永遠にこの孤独感のなかで
一生を送らなければならない
ああ、この世の中はほんとうに
くるしみ、さびしさ、哀しみが多すぎて
ちっとも春はやってこない
春よ、お願いだ
やってきておくれ
分厚い雲にかくれた日よ
顔を見せておくれ
そしてこの世の中とわたしを照らしておくれ
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