幻想即興曲/りつ
雪の嵐 吹きすさぶ
真白き夜
悲鳴のような通り風哭き
繰り返し繰り返す
雪と風しか視えぬ中
男が一人歩いてる
旅人だろうか
重く不確かな足取りで
背負った荷物に腰を曲げ
風に逆らい雪を浴び
一歩一歩 歩いてる
男は幻を視る
故郷に残した妻と息子と
ゆったり暖炉のはぜる火と
慎ましやかなゆうげの匂い
窓から洩れる暖かな灯りが
柔らかく 積もった雪を照らしだす
息子と飾ったクリスマスツリーには
てっぺんに大きなお星さま
男の帰りを信じ待つ
幻影の内に男は倒れ
吹雪は容赦しながら
男の眼を閉じ込める
男の上に
雪は優しく降り積もる
優しく 優しく
眠れよと
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