女の湾/リリー
 
 今でも時たま
 わたしを誘いに来るお月さま
 凍てつきはじめた冬空で
 消えいるような音符を奏でます

 かつて紅い原野から湧いた
 孤独なアンサンブル
 じぶんの柔らかかった下腹部から
 規則正しくながれた旋律がリズムを失って
 不安を伴い、次第に
 一つの予見へ転調する

 長風呂あがれば
 洗面所のゴミ箱に捨てる髪の束
 洗髪で抜け落ちた一週間分が黒い渦潮になって
 踊っている
 ふと過ぎる寄るべないさみしさ

 女の湾に、佇むわたしは苦笑いするのです。

 


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