フルーツ・ツリーで待ち合わせ/天使るび(静けさが恋しい)
にぼくは縋りついていた。
それでもおじいちゃんどこにもいなかったよ。おじいちゃんの遺体はすでにおじいちゃんではなかった。おじいちゃんの形をして見えていたものは心だったのかな。
ぼくは泣きながらおじいちゃんのどこにもいない世界を生きている。赤十字病院まで通院した後にお家にお帰りして洗面所の前でおじいちゃんは倒れたの。洗面台に当たって入れ歯が床に飛んでいったらしい。
見事なおじいちゃん。おじいちゃんのお形見の腕時計を手のひらにつけている。バンドの調整をしても脆弱な細さのぼくの手首には緩かった。
ムーブメントの部分を握りしめているとおじいちゃんと手を繋いでいるみたいだ。い
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