フルーツ・ツリーで待ち合わせ/天使るび(静けさが恋しい)
 


 腕を殴りながら歩いて泣けて駆け足でお部屋までたどり着いたよ。打撲の痕は熱を帯びて浅く痛む。腫れた感じの目蓋と似た温もりに安堵する。

 歯切れのよい殺意を抱きながら特定の対象についての個性を少しずつ思い出せないことに気づく。

 誰もいない暗闇のなかで自分の影に向かって石ころを投げているような気分だ。

 日暮れどきにいつまでも自分の影とお遊びしようとして泣いたっけ。ぼくに踏みつけられた影は決してぼくを加害しないけれども肉体の居残るうちはずっとついてくるのだろうな。

 大好きなおじいちゃんの遺体の前でぼうぼうに泣いたこと。親族に仲間がいないから動かないおじいちゃんにぼく
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