夜のくじら/みぎめ ひだりめ
 
く 遠くの 波の向こう
星も見えぬ 風も聞こえぬ
世界の果てに ひとりぼっちで
くじらは さみしかったのだそうだ

しばらく すると
くじらは 少しだけ なみだを流した
その なみだを浴びたら
なんだか かなしくなってしまって
ぼくも 少しだけ なみだを流した

すると くじらは 微笑んで
飲み込んだ 星を ぷっと吐き出し
ぼくを 家に帰すと
また どこかへ 行ってしまった

きっと くじらは
ぼくの しらない しらない場所で
また 少しだけ なみだを 流すのだろう

星は 息を 吹き返したように
また きらきらと かがやきはじめた
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