ひそやかに/竹節一二三
 
ゆびさきを闇にひたして
子宮の中に帰ろうとこころみる
背の高いくすのきがわらい
絡まる根でわたしをとらえた

蝉のねごとが聞こえる
綿毛のくしゃみが聞こえる
トマトの放出する酸素が見える
切り株はなみだをながし
茅をひけば血が流れる

胎のなかはひどくあたたかく
赤い闇がわたしをみだす
ひそやかに ひそやかに
足をのばせばへそにぶつかる

とくとくと何かが響き
目裏には赤がはじける
羊水にひたれば
なにもかもが
ひそやかに
 なる

おやすみなさい
くすのきの闇にひたり
わたしはまるまり目を閉じた
絡みつく根が
繭のように

ひそやかに
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