病床の光/栗栖真理亜
「ありがとう」
涙を瞳に滲ませながら何度も何度も
乾いた手で私の手を握った
病室の孤独なベッドの上で
「来るとは思わなかったから会えて本当に良かった」
ひととき虚ろな目が活気づき
感謝の言葉を述べる河本さん
思えば詩の合評会でお会いしてから
詩人仲間として批評し合い
切磋琢磨した仲だった
「元気になったら必ず教会へ伺います。あなたに続いて洗礼を受けます」
痩せこけた頬に朱が浮かび
力強い口調で断言する
河本さんがまさか
私が通う教会と接点があるとは知らず
病を機に洗礼を受けたがっていることを牧師さんから聞いてひどく驚いた
いまその固い意思を受け止めたような気がした
「また詩についてもいろいろお話ししましょう」
「ぜひそうしましょう」
二人だけの約束
「詩以外でもお友達でいましょう」
その彼の言葉がぐっと心に染み込んだ
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