女よ/リリー
 
 風が散っていった
 ウイスキーの琥珀に酔った天地に

 男と女が愛し合い
 いつの日か又
 他人の様にそっけなく
 だが にこやかにすれ違う
 それが何なのだろう

 ふと逢った人に心ときめかし
 生々しい笑いの影をとどめる
 おまえ
 湿った口づけの悲しさを残さない
 おまえ
 果物のような唇だと言った男の髪をなでながら
 (あたしの心臓はどうして踊らないのかしら?)
 瞳をこらす
 おまえ

 嘆かなくとも良い
 夜のかたちの揺れるままに
 身をまかせ
 両の乳房は柘榴の様に赤い実となり
 散っていく凍った風の鋭い欠片がつき刺さる

 女よ、
 あかく滲んだ胸をひたと抱きしめ
 いま
 琥珀のグラスをかかげよう
 
 
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