彩の瘡蓋/ホロウ・シカエルボク
地の端っこにさ、小さな石で出来た舞台があったんだ、ライブハウスくらいの…そこの舞台である夜、四十代の女性がガソリンを被って焼身自殺をしたんだ、新聞に載ったよ、人間がそんな風に死ななくちゃいけないなんてどういうことなんだろうってその時思ったんだ、いまはもうリフォームされて跡形もなくなっているけれど、当時はその舞台の端っこがちょうど小柄な人が座っていたかたちに焦げていて、それは少なくとも十年くらいは残っていたんじゃないかな、なにも知らない子供たちは気にしないで遊んでいたけれどね、俺はその焦げ跡をみるたびに、名も知らないおばさんはちゃんと死ねたのだろうか、と複雑な気分になったものだったよ、それが自分の身近で起きた事件じゃ凄く印象深い出来事だったよね―あの公園の近くを通るたびに今でも思い出すよ…ああ、あの花のやつは、思っていたより大きなダメージを俺に与えたんだろうな、今になってそんな気がしたよ。
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