彩の瘡蓋/ホロウ・シカエルボク
 
やつさ、陽射しは強かったが風は冷たく、暑いとも寒いとも言い難い奇妙な気温だった、ほんの少しシャツに滲んだ汗が風で冷える度に、体調を崩すかもしれないなという嫌な予感が過った、だけど、冷えた身体がまた日差しで温もるたびにそのことを忘れてしまうのだ、こんなことについて考え続けていてもキリがない、小さな花が散ったところで俺の人生になにかが生まれたり失われたりするわけでもない、それはほんの少し、公衆トイレを借りた公園で一休みをした時に偶然目にした光景に過ぎないのだ、それは例えば、公道で交通事故を目にしたとか、電車に飛び込んで死んだやつを見たとか、街で妙な宗教の勧誘に引っかかりそうになったとか、そうした出来事
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