冬どなり/
本田憲嵩
もみじ、
肩まで浸かった露天風呂からのぞむ、
さりゆく、秋の赤い夕ひが、
ひとすじの、きまぐれな寒風とともに落としていった、
いちまいの、
星のカケラ、
休憩室の掲示板に、ずらりと並んで立て掛けられた、
細ながい色紙には、
和筆でしるされた、いくつもの俳句の、
いくつもの冬どなり、
“隣人や柚子の湯を持て招き入れ”
なんにもない休日に、
すこし遠い村の温泉に行くたびに、ぼくが老いに近づく、
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