年平均 6本。/田中宏輔
まじえて愛おしいようなところがあって
ひとりの人間の表情のなかに
別の人間の表情をまじえて見ることもあるんやなあって思った
ヒロくんと撮った写真
たまに出して見たりするけど
ぼくが死んで
ヒロくんが死んで
写真のなかのふたりが笑ってるなんて
なんだかなあ
ぼくは恋をしたことがあった
「また会ってくれるかな」
「いいですよ」
はじめてあった日の言葉が
声が
ぼくの耳に聞こえる
「あつすけ」
いつもちょっと怒ったように呼んでたヒロくんの声
そういえば
きのう
恋人から
「あほやな」
「なんでそんなにマイペースなんや」
「きっしょいなあ」
「腹立つなあ」
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