愛の影/菊西 夕座
獄に怪物をとじこめて追いやっている
だれも怪物に愛情をよせることができないのはそれが愛の影だからであって
影は人間がとじこめているおぞましい体内器官とねじれた血脈を通じている
血はいまもたえずあらゆるものを焼き尽くしては混沌の夜をふとらせている
一切無常の炎をかかえてよもやひとが外界に決を求めるのはいかがなものか
おたがいを否定しあうことはせずとも情熱はすでに背をむけて奔流しており
ひとはひとえに体内にこそ狂熱と野心にふさわしい自らを打ち建てればよく
外界においてはその血塗れた記録を浄化する光と共鳴と献身を物語ればよい。
戻る 編 削 Point(2)