しみが染み込む/海
しみという小説を読んで感想を綴ったら
それは実在した人物を弔った作品だと教わって
そこでやっと亡くなった友人のことを思い出し
忸怩たる思いにかられた
時々は思い出していたけれど
最近はすっかり忘れていた
壮絶だった最期を見たのに
消えない傷を負ったと思っていたのに
テレビの中で誰かが死んだって思い出さなかった
覚えていた時は
何度も弔いの詩を書いては納得できずにいた
もう一度しみを読む
友人と重ねようとしたら
少しも友人とは重ならなかった
別の人なのだから当然だ
自分の友人の弔いは
どんなに時を経ても自分でしなければならない
しみはシミのように記憶に染み込んだ
この小説があればもう忘れない
※「しみ」は坂口恭平さんの小説です
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