詩は表現ではない/室町 礼
しは初めに言葉があったとは思っていない。
言葉の前に表現があった。それはだれに対する表現で
あったか。まず自分に対する表現であったのではない
だろうか。狩りに出た古代人が獲物がとれず腹が減っ
て肩を落とし、木の下でうなだれてため息をつく。そ
の仕草は誰に対するものでもなく自分に対する表現で
あったといえる。巨大な動物をみた記憶をもとに岩壁
に大きな円を描いたとすればそれも表現である。それ
は誰かに対する通信ではなく自分の記憶を再現して自
己確認しているのだったとおもう。獲物を逃がして地
団駄を踏むのも表現だ。つまり言葉がなくとも表現が
あれば単独者にとってモノや感情はあったの
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