大阪文学学校の思ひ出 ─続・大阪文学学校体験記─/室町 礼
ラスを選んだ。
講師は日高てるだった。
日高てるは歴程の重鎮で野村喜和夫なども日高てるに
は深くお辞儀して敬意を表していた。当時はもう70
に近かったかもしれないが、ふくよかな方で女性のも
つ華やかさはもっておられ老年者の影のようなものは
微塵もなかった。
このクラスでもやはり授業のあとで必ずみなが酒屋な
どに繰り込みお酒を酌み交わすのが常だった。
初見の団らんの席でわたしは日高てるからこんなこと
をいわれた。
「その顔でずいぶん女の子を泣かせて来たのだね」
内心「は?」だった。
日高てるは人を見る眼がないのか? それとも何か含
むものがあるとか?
あるとき居酒屋の座
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)