大阪文学学校体験記/室町 礼
 
た。
そういう境地の人に対処するすべのないわたしは腫れ
物をさわるように遠くから彼女を眺めていた。
ぼんやりしているわたしのことだから気がつかなかっ
たが、私のクラスの講師だった哲学者で詩人の細見和
之が授業中にその女に眉をひそめて注意したことがあ
る。実作詩の朗読中のことである。あとで細見から聴
いたところによればわたしを迂遠にデスる詩をかいて
いたという。
まさか気がつかなかった。それもわたしの身体的欠陥
をデスる詩を。それに気がついて細見は注意したのだ
という。
あの女、いつから死ぬ死ぬっていう詩ばかり書いてる
んですか。
あとで細見に尋ねると、死ぬ死ぬっていう人
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