大阪文学学校体験記/室町 礼
苦しんでいるとはつゆ知らなかった。かれは長い間、
性自認と身体性の違いに苦しんでいたのだった。
ある日、二人でミナミの酒場に飲みに出かけて、Aが酔っ
払ってテーブルにうつぶしてしまったことがある。わたし
は旧知の間柄であるバーのママに彼を起こさないでといっ
て先に帰った。そのあと、目が覚めたAはわたしが居ない
ことを知って暴れたという。
それにしても今から思うと、わたしは大阪文学学校の連中
にいつも殴られていた。
一番酷い目にあったのは、玄月という在日朝鮮人の男子生
徒が芥川賞をとったときである。
北朝鮮の在日の方が経営する鶴橋の料亭(ここの女将も大
阪文学学校の生徒だ
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